不動産クラウドファンディングのファンドを開くと、いちばん大きく表示されているのは想定利回りです。そのため、つい利回りの数字だけで比べてしまいがちです。
しかし、想定利回りは予定の数字にすぎません。実現するかどうかは、その利回りをどうやって生み出す計画なのか、そして計画が崩れたときにどれだけ守られるのかで決まります。
この記事では、投資する前に確認したい7項目を、確認すべき順番で並べました。上から3つまでは、どのファンドでも必ず見てください。
最初に見るべきは、ファンドではなく運営会社です。
理由は明快で、優先劣後方式は事業者の破綻には効かないからです。匿名組合型では、投資家が持っているのは事業者に対する契約上の権利です。事業者が倒れれば、物件が無事でも資金の回収は困難になります。
確認したい項目は次のとおりです。
| 項目 | 見方 |
|---|
| 資本金 | 事業規模に対して十分か。不特法の事業区分ごとに下限が定められています |
| 事業年数 | 不動産事業としての経験年数。クラウドファンディング事業の開始年とは分けて見ます |
| 上場の有無 | 上場していれば決算情報が定期的に開示されます |
| 償還実績 | これまで何件のファンドを予定どおり償還してきたか |
| 情報開示 | 決算情報や運用レポートを公開しているか |
当サイトでは、各社の掲載ファンド数と平均利回りを集計しています。掲載件数が多い=それだけ組成と償還を繰り返してきたという意味では、ひとつの目安になります。
各社の詳細な情報は運営会社一覧から確認できます。
次に見るのが、そのファンドの緩衝材の厚さです。
劣後出資が20%であれば、物件価格が20%下落するまで、計算上は投資家の元本が維持されます。10%なら10%までです。
| 劣後出資割合 | 評価の目安 |
|---|
| 30%以上 | かなり厚い。運営会社のリスク負担が大きい |
| 20%前後 | 厚め。一般的な水準より上 |
| 10%前後 | 標準的な水準 |
| 5%以下 | 薄い。物件のリスクと見合っているか要確認 |
| 記載なし・なし | なぜ無いのかを確認する |
ただし、適切な水準は物件によって変わります。稼働中の都心のマンションであれば10%でも十分かもしれませんが、開発中の物件や海外物件であれば、より厚い劣後が望ましいと考えられます。
劣後出資の割合は募集ページか契約成立前書面に記載されています。書かれていない場合は、書かれていないこと自体が判断材料になります。
想定利回りが6%だとして、その6%はどこから生まれるのか。募集ページを読んで、次の3つが説明できるか確認してください。
収益の種類は何か
賃料収入(インカム)が中心なのか、売却益(キャピタル)が中心なのか。賃料型は見通しが立てやすく、売却益型は出口の価格次第で結果が変わります。
出口はどこか
運用終了時に物件をどうするのか。第三者に売却するのか、事業者の関連会社が買い取るのか。関連会社への売却であれば、価格の妥当性を第三者が検証しにくい構造になります。
前提条件は現実的か
想定している稼働率や賃料水準は、周辺の相場と比べて無理がないか。売却価格の前提は強気すぎないか。
当サイトの掲載データでは、想定利回り10%以上のファンドの多くが海外物件・開発型・売却益狙いのいずれかに該当します。高い利回りには理由があり、その理由は「より大きな不確実性を投資家が引き受けている」ことです。
利回りの水準感については平均利回りを実データで検証した記事にまとめています。
運用期間は、単に「短いほうが良い」わけではありません。
短い運用期間の利点と難点
資金が早く戻るぶん、市況の変化に対応しやすくなります。一方で、償還のたびに次の投資先を探す必要があり、その待機期間は運用されません。運用3ヶ月のファンドで年利8%でも、次が見つからなければ年間の資金効率は大きく下がります。
長い運用期間の利点と難点
待機期間の影響が小さく、資金効率は高くなります。ただし、その間に資金は動かせず、市況が変わっても対応できません。
当サイト掲載の不動産特定共同事業型ファンドは、平均11.4ヶ月、12ヶ月ちょうどが最も多いという分布です。
この点を含めた実質的な利回りの考え方は、「利回り6%」の手取りを計算した記事で扱っています。
募集ページに書かれている情報の量と具体性は、その事業者の姿勢を測る指標になります。
開示が厚いファンドの例
所在地(住所レベル)、築年、構造、規模、現在の稼働率、賃料の実績、周辺の取引事例、想定売却価格の根拠、写真、レントロール
開示が薄いファンドの例
「東京都内の賃貸マンション」といった抽象的な記載のみ、写真がイメージ画像、賃料や稼働の実績に触れていない
物件の詳細を伏せる理由がある場合もあります(売主との守秘義務など)。ただし投資家の立場からは、判断材料が少ないファンドはそのぶんリスクが高いと考えるのが妥当です。
見落とされがちですが、実務上とても重要です。
人気のファンドは募集開始から短時間で満額になります。抽選式なら外れます。投資したいと思ったファンドに投資できる保証はありません。
確認しておきたいのは次の点です。
- 先着式か、抽選式か、併用か
- 募集開始の日時
- 抽選の場合、当選後の入金期限はいつか
- 口座開設と本人確認にどれくらいかかるか
口座開設が完了していなければ、良いファンドを見つけても申し込めません。先に口座を開いておくことが、実は最も効く準備です。詳しくは抽選・先着への向き合い方にまとめました。
最後は、個別のファンドではなく全体の話です。
分散すべき軸は3つあります。
事業者の分散 — 事業者の破綻は優先劣後方式で守れないため、複数社に分けておくこと自体が対策になります
ファンドの分散 — 1つの物件に集中させない
時期の分散 — 償還時期をずらすことで、まとまった資金が一度に遊ぶことを防げます
当サイトには16社・9,094件のファンドを掲載しています。条件で絞り込んで比較できるので、ファンド一覧や、1万円から投資できるファンドなどのカテゴリから探してみてください。
投資前に、次の項目を確認してください。
- 運営会社の資本金・事業年数・償還実績を確認したか
- 劣後出資の割合を確認したか
- 利回りの根拠(収益の種類・出口・前提条件)を読んだか
- 運用期間中、その資金を使う予定がないと確信できるか
- 物件の具体的な情報が開示されているか
- 募集方式と募集開始日時を把握しているか
- 1社・1ファンドに資金が集中していないか
- 元本が毀損する可能性を受け入れられる金額か
8番目が最も大切かもしれません。優先劣後方式があっても、元本は保証されていません。失っても生活に影響しない範囲にとどめてください。
- 見る順番は、① 運営会社 → ② 劣後出資割合 → ③ 利回りの根拠
- 想定利回りは予定値であり、比較の出発点にすぎません
- 事業者の破綻は優先劣後方式で守れないため、事業者選びと分散が最終的な防波堤です
- 開示の薄いファンドは、そのぶん判断材料が少ないと考えるのが妥当です
- 口座は先に開いておく。投資機会は「投資できる状態」でないと拾えません
リスクの全体像は「やめとけ」と言われる理由を検証した記事で整理しています。