「不動産クラウドファンディングはやめとけ」という言葉を目にして、この記事にたどり着いた方が多いと思います。
結論から言えば、「やめとけ」と言われる理由には、根拠のあるものと、誤解に近いものが混ざっています。そして根拠のあるもののなかにも、対策できるものと、構造上どうにもならないものがあります。
この記事では、仕組みのどこにリスクが埋まっているのかという観点から7つに分解して検証します。特定のサービスを勧めることも、逆に否定することも目的ではありません。
先に全体像です。
- 構造上どうにもならないリスク:元本毀損、流動性の低さ、税の非対称性
- 選び方で減らせるリスク:事業者の破綻、利益相反、情報開示の薄さ
- 誤解に近いもの:「レバレッジが効かないからダメ」「所有権がないから無意味」
最も本質的なリスクです。
不動産クラウドファンディングは預金でも保険でもなく、不動産事業の成否に連動する投資です。次のような場合に、償還額が出資額を下回る可能性があります。
- 物件の売却価格が想定を下回った
- 空室が続き、賃料収入が計画に届かなかった
- 修繕費や運営コストが想定を超えた
- 海外物件の場合、為替が不利に動いた
多くのファンドは優先劣後方式を採用しており、劣後出資の割合までの下落は運営会社が受け止めます。ただし、それを超えれば投資家の元本も減ります。劣後20%のファンドで物件価格が30%下落すれば、投資家の元本は12.5%毀損します。
「優先劣後方式があるから安全」ではなく、「どこまでなら耐えられるかが決まっている」と理解してください。
対策できるか:部分的に。 劣後出資の厚いファンドを選ぶ、複数のファンドに分散する、ハイリスクな物件を避ける、といった方法で確率と影響は下げられます。ゼロにはできません。
運用期間中、資金は原則として動かせません。当サイトが掲載している不動産特定共同事業型ファンドの平均運用期間は11.4ヶ月、中央値は12ヶ月です。
株式や投資信託のように「必要になったら売る」ということができません。運用期間が延長される可能性もあります。
一部のサービスには途中換金の制度がありますが、次の点に注意が必要です。
- 手数料がかかることが多い
- 申請すれば必ず応じてもらえるとは限らない
- 市況が悪いときほど、換金しにくくなる可能性がある
対策できるか:できない。 これは商品の設計そのものです。できるのは「使う予定のあるお金を入れない」ことと、運用期間の短いファンドを選んで拘束期間を区切ることだけです。
見落とされがちですが、優先劣後方式では守れないリスクです。
匿名組合型の場合、投資家が持っているのは事業者に対する契約上の権利であって、不動産の所有権ではありません。事業者が破綻した場合、投資家は原則として一般の債権者の一人になります。
物件が無事でも、事業者が倒れれば、資金の回収は破産手続のなかで争われることになります。この場面で劣後出資は何の役にも立ちません。劣後出資は「売却代金をどう分けるか」の順序を決めるものであって、事業者の倒産から投資家を隔離する仕組みではないからです。
不動産クラウドファンディング業界では、過去に償還が予定どおり行われなかった事例や、事業者の経営が行き詰まった事例が報じられています。行政処分を受けた事業者も存在します。「不特法の許可を受けているから大丈夫」とは言えません。許可は事業を始めるための要件であって、事業の成功を保証するものではありません。
対策できるか:できる。 ここが選び方で最も差がつく部分です。運営会社の資本金、事業年数、上場の有無、これまでの償還実績、情報開示の姿勢を確認してください。
各社の詳細は運営会社一覧から確認できます。
意外に効いてくる「リスク」です。
人気のファンドは募集開始から短時間で満額になります。抽選式のファンドは、申し込んでも外れます。投資したいと思っても、実際に資金を投じられる機会は限られています。
当サイトの掲載データでも、掲載ファンド9,094件のうち、現在募集中なのは14件にとどまります。「良さそうなファンドを見つけたが申し込めなかった」ということは、始めてみると日常的に起こります。
この結果、次のようなことが起きます。
- 予定していた資金が運用されないまま滞留する
- 焦って条件の悪いファンドを選んでしまう
対策できるか:できる。 複数のサービスに口座を開いておくことと、募集スケジュールを把握しておくことです。抽選・先着への向き合い方にまとめました。
これは制度上の話で、投資家側では変えられません。
- 分配金は雑所得・総合課税。所得が高い人ほど税負担が重くなります
- NISA・特定口座の対象外です
- 損失が出ても給与所得などと損益通算できません。翌年への繰越控除もできません
つまり、利益が出た年には課税され、損失が出た年には救済がないという非対称な構造です。株式投資であれば損失を3年間繰り越して将来の利益と相殺できますが、それができません。
さらに、表示されている想定利回りは税引き前です。20.42%が源泉徴収されるため、手取りは表示の約0.8倍になります。詳しくは税金と確定申告の記事と実質年利を計算した記事をご覧ください。
対策できるか:ほぼできない。 課税所得が低い方は確定申告で還付を受けられる場合がありますが、制度そのものは動かせません。
情報開示の水準は事業者によって差があります。
とくに確認したいのが、物件の売却先が事業者の関連会社かどうかです。関連会社間での売買であれば、価格の決まり方に第三者のチェックが働きにくくなります。想定どおりの利回りが実現したとしても、その価格が市場価格として妥当だったのかは検証しづらいのが実情です。
また、運用中の状況(稼働率、賃料の実績、修繕の発生)をどこまで開示するかも事業者によります。運用レポートを定期的に出す事業者もあれば、償還まで音沙汰がない事業者もあります。
対策できるか:できる。 募集ページに書かれている情報の量と具体性は、その事業者の姿勢を測る目安になります。物件の所在地が「東京都内」としか書かれていないファンドと、住所・築年・稼働率・賃料実績まで開示しているファンドでは、判断材料の厚みが違います。
「現物の不動産投資ならローンを使って数千万円の物件を動かせるのに、クラウドファンディングは自己資金の範囲でしか投資できない」という指摘があります。
これは事実です。ただし**「だからダメ」とは言えません**。レバレッジは利益を増幅すると同時に損失も増幅します。借入をせずに済むということは、最悪でも出資額を失うだけで、追加の債務を負わないということでもあります。
匿名組合型の投資家は有限責任です。物件で何が起きても、出資額を超える負担を求められることはありません。
同じことが「所有権を持てない」という指摘にも言えます。所有権を持たないぶん、管理の手間も、固定資産税も、入居者トラブルへの対応も発生しません。
評価:これはリスクというより、商品の性格です。 現物不動産投資の代替として見ると物足りず、預金の代替として見るとリスクが高い。その中間にある商品だと理解するのが実態に近いでしょう。現物投資やREITとの違いは比較記事で整理しています。
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| 向いている | 数年使う予定のない余裕資金がある/少額から不動産に分散したい/管理の手間をかけたくない/リスクを理解したうえで預金以上の利回りを狙いたい |
| 向いていない | 近く使う予定のあるお金しかない/元本割れを絶対に避けたい/すぐ現金化できないと困る/課税所得が高く税負担が重い/短期間で大きく増やしたい |
7つを整理すると、次のように言えます。
根拠のある指摘
- 元本保証がない(1)
- 途中解約できない(2)
- 事業者の破綻時に守られにくい(3)
- 税制が不利(5)
選び方で減らせる指摘
- 事業者リスク(3)
- 情報開示・利益相反(6)
- 投資機会の不足(4)
やや誤解を含む指摘
- レバレッジ・所有権(7)— 商品の性格であって欠陥ではありません
したがって、「やめとけ」は全否定としては行き過ぎですが、「元本が守られやすい安全な商品」という理解も同じくらい実態から外れています。余裕資金の一部を、複数のファンドと複数の事業者に分けて投じるという使い方であれば、選択肢として成立します。
- 元本保証はなく、優先劣後方式にも限界があります
- 事業者の破綻には優先劣後方式が効きません。事業者選びが最終的な防波堤です
- 途中解約できないため、使う予定のあるお金は入れないでください
- 税制は不利で、損失には救済がありません
- 「やめとけ」は行き過ぎですが、資産の中心に据える商品ではありません
リスクを踏まえたうえでの選び方は、失敗しない選び方のチェックポイントにまとめています。