不動産クラウドファンディングの広告でよく見るのが「1万円から不動産投資」というフレーズです。
これは事実です。当サイトが掲載している不動産特定共同事業型ファンドのうち、87.1%が最低投資額1万円以下です。ただし、期待する内容によっては拍子抜けするかもしれません。
先に現実的な数字を出しておきます。
- 1万円・想定利回り6%・運用12ヶ月 → 分配金600円、手取り約478円
- それでも最初は少額で試す意味があります
- 口座開設には数日〜1週間かかります。投資したいファンドを見つけてからでは間に合いません
まず金額の話をしておきます。
| 投資額 | 想定利回り | 運用期間 | 分配金(税引前) | 手取り |
|---|
| 1万円 | 4% | 12ヶ月 | 400円 | 約318円 |
| 1万円 | 6% | 12ヶ月 | 600円 | 約478円 |
| 1万円 | 8% | 12ヶ月 | 800円 | 約637円 |
| 1万円 | 6% | 6ヶ月 | 300円 | 約239円 |
| 10万円 | 6% | 12ヶ月 | 6,000円 | 約4,775円 |
| 50万円 | 6% | 12ヶ月 | 30,000円 | 約23,875円 |
1万円で1年待って、コーヒー数杯分です。資産形成の手段として1万円を投じるのは、あまり意味がありません。
それでも最初の1万円には価値があります。理由は3つです。
1. 仕組みを実地で確認できる
申込から入金、運用中の連絡、分配、償還まで、一度通してみると理解が段違いになります。記事を10本読むより早い場合があります。
2. 事業者の対応が分かる
運用レポートは届くのか。分配は予定どおりか。問い合わせに返事は来るか。これは実際に投資してみないと見えません。次に大きな金額を入れる相手かどうかを、1万円で見極めるという使い方です。
3. 失っても痛くない
元本は保証されていません。最初から大きな金額を入れて、仕組みを理解しないまま毀損するより、はるかに健全です。
実際の流れを時系列で見ていきます。日数は目安です。
1〜7日目:口座開設
ここが最初の関門です。口座がないと、募集に申し込めません。
必要なもの
- 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
- マイナンバー確認書類
- 銀行口座(分配金・償還金の受取用)
かかる時間
- スマートフォンでの本人確認が完結する場合:即日〜2営業日程度
- 書類の郵送やハガキでの住所確認を伴う場合:1週間程度
この期間があるため、「良さそうなファンドを見つけた→今から口座開設」では間に合いません。 先に口座を開いておくことが、最も効く準備です。
複数のサービスに申し込むなら、この段階でまとめて手続きしておくのが効率的です。口座開設・維持に費用はかからないのが一般的です。
8〜30日目:ファンドを選び、申し込む
口座ができたら、募集中のファンドを探します。
ここで多くの人がつまずくのが、募集中のファンドがそもそも少ないという現実です。当サイトの掲載データでも、9,094件のうち現在募集中は14件にとどまります。
さらに、人気のファンドは募集開始から短時間で満額になります。抽選式なら外れます。申し込めば必ず投資できるわけではありません。 この点への向き合い方は抽選・先着の記事にまとめました。
選ぶときの視点は選び方の記事で詳しく書いていますが、最初の1本なら次の3点で十分です。
- 運営会社が長く事業を続けているか
- 劣後出資の割合が示されているか
- 運用期間が自分の許容範囲か(最初は12ヶ月以内が扱いやすいでしょう)
30〜40日目:入金と運用開始
先着式なら申込と同時か直後に入金、抽選式なら当選後に入金します。
当選後の入金期限には注意してください。 期限までに入金しないと権利が失効し、サービスによってはペナルティが設けられている場合があります。
入金しても、すぐに運用が始まるわけではありません。募集が締め切られ、運用開始日を迎えるまでに数日から数週間の空白があります。この期間は分配金が発生しません。 資金効率を考えるうえで見落としがちな点です(実質年利の記事で詳しく計算しています)。
40〜90日目:運用期間中
やることは基本的にありません。
サービスによっては、運用レポートや稼働状況の報告が届きます。届かないサービスもあります。この差が、次にそのサービスを使うかどうかの判断材料になります。
分配のタイミングはファンドによって異なります。
- 毎月分配 — 運用開始の翌月から少しずつ入金される
- 四半期ごと — 3ヶ月ごとにまとまって入る
- 償還時一括 — 運用終了までは何も入ってこない
「投資したのに何も振り込まれない」と不安になる方がいますが、償還時一括型であればそれが正常です。申込前に分配タイミングを確認しておきましょう。
90日目以降:分配・償還
分配金は20.42%が源泉徴収された後の金額が振り込まれます。「600円のはずが478円しか入っていない」というのは、正しく処理されている状態です。
運用期間が終わると、元本が償還されます。償還金の出金時に振込手数料がかかる場合があるため、条件を確認しておいてください。1万円の投資で478円の利益が出ても、振込手数料が数百円かかれば、手元にはほとんど残りません。
一度サイクルを経験したら、次は金額と分散を考える段階です。
分散の目安
- 事業者の分散 — 事業者の破綻は優先劣後方式では守れません。複数社に分けることが最も効く対策です
- ファンドの分散 — 1つの物件に集中させない
- 時期の分散 — 償還時期をずらすと、まとまった資金が一度に遊ぶことを防げます
3社×3ファンドに1万円ずつなら9万円。この程度から、分散が意味を持ち始めます。
注意したいこと
- 分散するほど、1件あたりの分配金は小さくなります。振込手数料の影響も相対的に大きくなります
- 口座を増やすほど、募集スケジュールの管理は煩雑になります
- 雑所得の合計が年20万円を超えると確定申告が必要になります(税金の記事参照)。10万円を年6%で運用しても分配金は6,000円程度なので、当面この心配は不要でしょう
- 生活資金や近く使う予定のあるお金を入れる — 運用期間中は原則として引き出せません
- 1つのサービス・1つのファンドに集中させる — 分散が唯一の現実的な防御策です
- 利回りだけで選ぶ — 高い利回りには理由があります
- 口座開設を後回しにする — 投資機会は「投資できる状態」でないと拾えません
- 1万円・利回り6%・12ヶ月の手取りは約478円。金額を期待する投資ではありません
- それでも仕組みと事業者を1万円で確かめられる価値があります
- 口座開設に数日〜1週間かかります。先に開いておくこと
- 募集中のファンドは常に限られています。申し込めば投資できるとは限りません
- 慣れたら、事業者・ファンド・時期の3軸で分散していくのが現実的です
まず仕組みから確認したい方は、不動産クラウドファンディングとは何かの記事からお読みください。