「想定利回り8%」と書かれたファンドを見たとき、それが高いのか、ごく普通なのかは、比較する相手を知らないと判断できません。ところが不動産クラウドファンディングの利回り相場は、サービスによって、また年によって、かなり違います。
そこでこの記事では、当サイトが掲載している9,094件のファンドデータをそのまま集計し、想定利回りが実際にどう分布しているのかを検証しました。どこかから引用した数字ではなく、各サービスの募集ページから収集した実データです。
先に結論を3つだけ書きます。
- 不動産特定共同事業型(いわゆる不動産クラファン)の想定利回りは、平均6.48%・中央値6.5%。ざっくり「6%台が真ん中」です
- ただし平均値はあてになりません。1社が同じ利回りで大量に募集していると、その水準に平均が引っ張られます
- 利回りは2019年ごろの4%台から6%台へ切り上がったあと、ここ数年は横ばいです
- 掲載ファンド数
- 9,094
うち募集中・運用中 1,079件
- 平均想定利回り
- 6.48%
不特法型1,214件の平均(中央値 6.5%)
当サイト掲載データより集計(2026/7/28時点)。 想定利回りは年率換算の表示値で、実現を保証するものではありません。
まず、不動産特定共同事業型のファンド1,214件を、想定利回りの帯ごとに数えたものが次のグラフです。
想定利回りの分布(不動産特定共同事業型(不動産クラウドファンディング))
当サイト掲載 1,211件を利回り帯ごとに集計
3%未満88件7.3%
3%台71件5.9%
4%台152件12.6%
5%台182件15%
6%台133件11%
7%台61件5%
8〜10%未満445件36.7%
10%以上79件6.5%
平均は6.48%、中央値は6.5%。「だいたい6%台が相場」と言ってよさそうに見えます。
ところが分布をよく見ると、5%前後にひとつ、8%台にもうひとつ、山が2つあることが分かります。これは「6%台のファンドがいちばん多い」という単純な話ではないことを意味しています。
8%台が突出している理由
8%以上10%未満の帯が飛び抜けて多いのは、特定のサービスが同じ利回りで大量に募集しているためです。
執筆時点で、あるサービスは350件を超えるファンドをすべて想定利回り8.0%で募集しています。この1社だけで、8%台の帯のおよそ8割を占めています。つまりこの山は「市場全体で8%が人気」なのではなく、「1社の商品設計がそのまま分布に出ている」だけです。
平均利回りという数字が、こうした偏りをそのまま吸い込んでしまうことは知っておいてください。「平均◯%」を見たら、その内訳が何社・何件で構成されているのかを確認する。これは不動産クラファンに限らず、投資の統計を読むときの基本です。
サービスごとの実際の水準は、次の表で確認できます(当サイトの掲載データから自動集計しているため、常に最新の値です)。
不動産特定共同事業型サービスの実績比較(当サイト集計)
平均利回りは各社の掲載ファンドの想定利回りを単純平均したもので、将来の成果を示すものではありません。2026/7/28時点。
| サービス | 平均利回り | 最低投資額 | 平均運用期間 | 掲載ファンド | 募集中・運用中 |
|---|
| TECROWD | 9.25% | 10万円 | 19.2ヶ月 | 100 | 25 |
|---|
| みんなの年金 | 8.00% | 1万円 | 11.7ヶ月 | 351 | 76 |
|---|
| 利回り不動産 | 7.35% | 1万円 |
|---|
こうして並べると、サービスごとに利回りの水準がはっきり違うことが分かります。3%台を中心に据えているサービスもあれば、平均9%を超えるサービスもあります。これは優劣ではなく、扱っている物件と収益の作り方が違うということです。
もうひとつ、混同されやすい点があります。「不動産クラウドファンディング」と呼ばれるサービスには、法的な立て付けが異なる2種類が混ざっています。
| 不動産特定共同事業型 | 融資型(ソーシャルレンディング) |
|---|
| 根拠となる法律 | 不動産特定共同事業法 | 金融商品取引法・貸金業法 |
| お金の流れ | 不動産そのものに出資する | 事業者を通じて資金を貸し付ける |
| 主な収益 | 賃料収入・売却益の分配 | 貸付金の利息 |
| 当サイト掲載件数 | 1,214件 | 7,880件 |
| 平均想定利回り | 6.48% | 6.04% |
平均だけ見ると近い水準ですが、分布の形はかなり違います。
想定利回りの分布(融資型(ソーシャルレンディング))
当サイト掲載 7,499件を利回り帯ごとに集計
3%未満43件0.6%
3%台111件1.5%
4%台867件11.6%
5%台1,953件26%
6%台4,063件54.2%
融資型は6%台への集中がきわめて強いのが特徴です。貸付金利という性質上、案件ごとのばらつきが小さくなりやすいためと考えられます。一方の不特法型は、物件の種類や出口戦略によって3%台から10%超まで広がります。
「どちらが良いか」ではなく、同じ利回りでもリスクの取り方がまったく違うという理解が重要です。この違いは融資型と不特法型の違いを解説した記事で詳しく整理しています。
次に、募集開始年ごとに平均想定利回りを並べてみます。
募集開始年ごとの平均想定利回りの推移
不動産特定共同事業型(不動産クラウドファンディング)/当サイト掲載データから募集開始年別に集計
192021222324
読み取れる傾向は次のとおりです。
- 2019〜2020年ごろは4%台が中心でした
- 2021年に6%台へ切り上がり、その後はおおむね6%台で推移しています
- 直近数年は、上がり続けているわけでも下がり続けているわけでもなく、横ばいです
この切り上がりは、サービスの数が増えて資金の奪い合いが起きたこと、そして高利回りを打ち出す新興サービスが参入したことの影響が大きいと考えられます。ただし前述のとおり、年ごとの構成企業が違えば平均も動くため、この推移も「市場金利のような一本の線」ではない点にはご注意ください。
当サイトの掲載データで想定利回り10%以上のファンドを抽出すると、その多くは次のいずれかに当てはまります。
- 海外物件を対象とするファンド — 為替と現地の不動産市況の影響を受けます
- 開発型・再生型のファンド — 建築中や改修前の物件で、完成・売却まで収益が確定しません
- 売却益(キャピタルゲイン)を狙うファンド — 出口の売却価格次第で結果が変わります
いずれも「予定どおりに進めば高い収益になる」設計であり、裏を返せば予定どおりに進まないリスクを投資家が引き受けているということです。想定利回りが高いファンドを検討するときは、利回りの数字よりも、その利回りを実現する計画の中身を読むほうが重要です。
最後に、利回りを比べるときに一緒に見るべき項目を挙げておきます。
1. 運用期間
当サイト掲載の不特法型ファンドの運用期間は、平均11.4ヶ月、中央値12ヶ月です。同じ利回り6%でも、3ヶ月で償還されるファンドと24ヶ月拘束されるファンドでは、資金効率も、その間に状況が変わるリスクもまったく違います。
2. 優先劣後の割合
運営会社が自ら出資する「劣後出資」の割合が高いほど、損失が出たときに投資家の元本が守られやすくなります。仕組みと限界は優先劣後方式の記事で解説しています。
3. 税引き後・期間換算の「実質」の手取り
表示されている利回りは通常、税引き前の年率です。匿名組合型の分配金からは原則20.42%が源泉徴収されるうえ、運用期間が6ヶ月なら受け取る額は年利の半分です。さらに申込から運用開始までの待機期間も含めると、資金効率はさらに下がります。表示利回りと手取りのギャップを計算した記事で具体的に検証しています。
4. 実際に投資できるかどうか
人気のファンドは募集開始から数分で満額になることがあります。利回りが良くても申し込めなければ意味がないため、抽選・先着への向き合い方も知っておくと無駄がありません。
- 不動産特定共同事業型の想定利回りは、平均6.48%・中央値6.5%。おおむね6%台が中心です
- ただし平均値は1社の商品設計に引っ張られます。分布と内訳まで見てください
- 利回りは2021年に4%台から6%台へ切り上がり、その後は横ばいです
- 10%超のファンドは、海外・開発型・売却益狙いに集中しています。高い利回りは、高い不確実性の対価です
利回りの水準感がつかめたら、次は「何を基準に選ぶか」です。失敗しない選び方のチェックポイントにまとめています。
募集中の不動産クラウドファンディング
現在募集中の不動産クラウドファンディングを運営会社横断で比較。想定利回りや運用期間、最低投資額などを確認できます。
条件に合うファンドを見る→