不動産に投資する方法は、ひとつではありません。少額から始められるものだけでも、不動産クラウドファンディングとJ-REIT(不動産投資信託)があり、資金があれば現物の不動産投資という選択肢もあります。
これらは「不動産に投資する」という点だけが共通で、商品としてはまったく別物です。とくに税制の差は大きく、後から気づいても取り返しがつきません。
この記事では7つの項目で比較します。先に要点を3つ。
- 流動性と税制優遇はREITが圧倒的に有利(NISA対象、損益通算可)
- 投資先を自分で選べる点と、日々値動きしない点はクラファンの利点
- レバレッジと所有権が必要なら現物投資。ただし手間と初期費用は桁違い
| 項目 | 不動産クラファン | J-REIT | 現物不動産投資 |
|---|
| 最低投資額 | 1万円程度から | 数万円〜数十万円 | 数百万円〜数千万円 |
| 換金性 | 運用終了まで原則不可 | いつでも売買可能 | 売却に数ヶ月 |
| 価格変動 | 日々の値動きなし | 市場で日々変動 | 相場で変動(可視化されにくい) |
| レバレッジ | 使えない | 使えない(法人内部では活用) | ローンで可能 |
| 所得区分 | 雑所得 | 配当所得 | 不動産所得 |
| 税率の目安 | 20.42%源泉+総合課税で精算 | 20.315% | 総合課税 |
| NISA | 対象外 | 対象 | 対象外 |
| 損益通算 | 不可 | 可能(上場株式等と) | 可能(一部制限あり) |
| 投資先を選べるか | 物件単位で選べる | 銘柄単位(複数物件のまとまり) | 完全に自分で選ぶ |
| 運用の手間 | なし | なし | 大きい |
当サイトが掲載している不動産特定共同事業型ファンドの87.1%が、最低投資額1万円以下です。1万円で始められる不動産投資という点では、他に類を見ません。
J-REITも1口あたり数万円から数十万円で買えるため、決して高いわけではありません。ただし1万円で買える銘柄はごく限られます。
現物不動産は、ワンルームマンションでも数百万円から。ローンを使うにしても頭金と諸費用が必要です。
J-REITは証券取引所に上場しているため、市場が開いていればいつでも売買できます。急にお金が必要になったら、その日のうちに現金化できます。
不動産クラウドファンディングは、運用期間中は原則として解約できません。 当サイト掲載ファンドの平均運用期間は11.4ヶ月です。この期間、資金は動かせないと考えてください。
現物不動産は、売ろうと思ってから買い手が見つかり決済が終わるまで、数ヶ月かかるのが普通です。
換金性という一点だけで見れば、順位は REIT > 現物 > クラファン です。
ここは評価が分かれるところです。
J-REITは市場で日々値動きします。 不動産の実力とは関係なく、株式市場全体が下げれば一緒に下げることがあります。金利の見通しにも敏感です。保有中、資産評価額が上下し続けます。
不動産クラウドファンディングには日々の値動きがありません。 出資してから償還されるまで、評価額が表示されることはありません。市場のノイズに振り回されずに済みます。
ただし、値動きがないことと、価値が変わらないことは別です。物件の価値が下がっていても、それが投資家に見えないだけかもしれません。見えないリスクは、無いリスクではありません。 償還のときに初めて結果が分かる、という構造でもあります。
現物不動産投資の最大の特徴は、ローンを使って自己資金の何倍もの資産を動かせることです。自己資金500万円で3,000万円の物件を持つ、といったことができます。
不動産クラウドファンディングとREITでは、これができません。自己資金の範囲でしか投資できません。
ただしレバレッジは、利益と同じだけ損失も増幅します。借入をしないということは、最悪の場合でも投じた金額を失うだけで、追加の債務を負わないということでもあります。匿名組合型のクラファンは有限責任です。
見落とされがちですが、長期で見るとかなり効いてきます。
J-REIT
- 分配金は配当所得。20.315%(所得税15.315%+住民税5%)
- NISA口座なら非課税
- 譲渡損失は他の上場株式等の利益と損益通算でき、3年間の繰越控除も可能
不動産クラウドファンディング
- 分配金は雑所得。総合課税(20.42%は源泉徴収による前払い)
- NISA対象外・特定口座で管理できない
- 損失は損益通算も繰越控除もできない
現物不動産投資
- 不動産所得。減価償却費を計上でき、赤字が出れば給与所得等と損益通算できる場合があります(土地取得に係る借入金利子など一部制限あり)
つまり、損失が出たときに救済があるかどうかで明確な差があります。不動産クラウドファンディングは、利益には課税され損失には救済がないという非対称な構造です。詳しくは税金と確定申告の記事で解説しています。
課税所得が高い方ほど、この差は大きくなります。総合課税の雑所得は最高で45%の所得税率が適用されるためです。
不動産クラウドファンディングは、物件単位で選べます。 「東京都心の稼働中マンション」「地方の開発案件」「海外物件」など、どこにお金が入るかを見て判断できます。
当サイトの掲載データでは、不特法型ファンドの物件所在地は東京都が最多で、次いで海外・地方が続きます。エリアで絞って探すことも可能です(東京都の物件、大阪府の物件)。
J-REITは銘柄単位です。 1つの銘柄が数十から百以上の物件を保有しているため、個別の物件を選ぶという発想ではありません。「オフィス特化」「住宅特化」「物流施設特化」といったタイプで選ぶことになります。分散が効いている反面、狙い撃ちはできません。
現物投資は完全に自分で選べます。 その代わり、選ぶための知識と手間がすべて自分の負担です。
クラファンとREITは、買った後にやることがありません。
現物投資は、入居者募集、賃料回収、修繕対応、確定申告(青色申告なら記帳も)と、事業としての手間がかかります。管理会社に委託しても、意思決定は自分で行う必要があります。
目的別に整理すると、次のようになります。
| こういう人 | 向いている |
|---|
| いつでも現金化できることが重要 | J-REIT |
| NISAや損益通算を活かしたい | J-REIT |
| 日々の値動きを見たくない | 不動産クラファン |
| 投資する物件を自分で選びたい | 不動産クラファン |
| まず1万円で試してみたい | 不動産クラファン |
| レバレッジをかけて資産を大きくしたい | 現物不動産投資 |
| 減価償却を使いたい | 現物不動産投資 |
併用にも意味があります。 REITは市場と連動して値動きし、クラファンは値動きしない代わりに換金できません。弱点が違うため、片方の弱点をもう一方が補う関係になりえます。
なお、同じ「クラウドファンディング」でも、融資型(ソーシャルレンディング)はまた性格が違います。こちらは融資型と不特法型の違いで整理しています。
- 換金性と税制優遇はREITが有利。NISA対象で、損益通算・繰越控除も使えます
- 投資先を物件単位で選べる点と、値動きしない点はクラファンの利点。ただし換金できません
- レバレッジと所有権が必要なら現物投資。手間と初期費用は大きくなります
- 税制の差は長期では無視できません。とくに損失時の救済の有無が大きな違いです
- リスクの性質が違うため、併用による分散も合理的です
不動産クラウドファンディングの仕組みそのものはこちらの記事で解説しています。